美濃工業株式会社

Interview

美濃工業株式会社

経営者のリーダーシップが地域と外国人をつなぐ

アルミダイカスト製品の分野で世界品質のモノづくりを支えるリーディングカンパニー、美濃工業株式会社。製造から二次加工まで社内で一貫生産される高品質の製品は、国内外で走っている多くの自動車の部品などに採用されています。
外国人雇用には2001年から取り組んでおられ、その内容について、総務部 部長の加藤 快武 様にお話を伺いました。

当社の海外拠点の雇用に繋がる

当社には、国内3工場のほかに、海外にもタイと中国、メキシコにグループ会社があります。2001年から国内工場でベトナム人技能実習生の受入れを始めましたが、2006年からは、海外拠点のあるタイの実習生に切り替えることにました。その結果、そのなかの何人かは、帰国後にタイのグループ会社に入ってくれ、現在も活躍してくれています。当社にとって、技能実習生を受け入れ、OJTで育てることは、将来の海外拠点の即戦力を育てることにも繋がっており、外国人材活用の大きなメリットだと感じています。

社長のリーダーシップのもと協同組合たくみを創設、そして優良企業認定へ

その後、中津川地域では、他の企業からも技能実習生を受け入れてみたいという声が徐々に高まってきました。当社でも、ちょうど実習生の採用人数を増やす計画があり、当社社長の杉本の発案で、2010年に、地元企業が連携して、地域に根差した監理団体運営を目的とした「協同組合たくみ」が創設されることになりました。
「協同組合たくみ」とタイの送出機関、受入れ企業の三者の関係は良好であり、人材が上手く循環できていると思います。
当協同組合の役割は、技能実習生の受け入れから帰国までを一貫して支援することです。当協同組合で実施する候補者の面接では、特に来日目的を重視して質問しています。来日目的や将来の夢がはっきりしている方は、モチベーションが高く、技能の習得が早いと感じます。
また、当協同組合は20年以上の実習生受け入れの実績があることから、過去に実習生としての来日経験がある兄弟や身内などから当社の話を聴き、実習に応募してくださったという方もよく見かけます。遠い母国の地で、口コミで当社を高く評価してくださっている先輩実習生たちがいると思うと嬉しい限りであり、これまで地道に、そして真摯に実習生に対応してきた成果だと自負しています。こうした積み重ねから、2019年には、外国人技能実習機構から優良企業認定をいただき、一回の実習生の受け入れ枠も10名から20名に倍増することが出来ました。

総務部 部長 加藤 快武さん

タイ人正社員の通訳サポートが実習生継続の支え

当社には、日本での留学を経て入社し、今も正社員として長く勤めてくれているタイ人が7名います。彼らは、通常業務の傍ら、実習生のために、タイ語版のマニュアル作りや生活トラブル時の通訳なども担ってくれています。彼らの尽力により、外国人のみならず、誰でも理解できる優れた業務マニュアルも整備できました。
タイには年上や年長者など、目上の方を敬う文化があります。彼らは、実習生にとって、長兄者として仕事と生活の両面における支えであり、困った時の相談相手としても、とても頼りにされています。
実習生の半数しか修了できない企業もあると聞いたことがありますが、当社では、このような社員あげての地道なサポート体制や生活支援に加え、協同組合の協力もあり、おかげさまで2019年には、受け入れ総数294名に対し、288名を無事修了させることができました。今後も実習生は増えていくと思います。実習生の相談役として、細かなことに配慮でき、安心して頼れるタイ人正社員の確保は、今後も重要な課題だと感じています。

素形材産業(※)では初めての特定技能1号受け入れ開始

2019年に新たな在留資格として特定技能制度が施行されました。当社では、過去に当社で実習生として働いたことのある経験者や、海外のグループ会社の社員から希望者を募ったところ、11名の方が特定技能1号の在留資格を取得して入社してくれました。しかも、素形材産業では初めての受入れであり、人数としても全国で最多となったことが当時話題になりました。それがきっかけで、中津川市の青山市長と杉本社長、入社してくれた特定技能1号の皆さんとの対談が実現し、その様子が新聞で紹介されました。
(※)素形材とは、様々な材料を加工してつくる部品・部材のこと

社長と特定技能者との面談の様子

トラブル対処への取り組みと地域との親交

実習生や特定技能などの外国人社員が増えたこともあり、当社では、日常の細かなトラブルを未然に防ぐための体制づくりや取組みを大切にしています。
例えば、日常的な生活や仕事のサポートはタイ人の正社員に概ね任せていますが、本人から私どもに直接相談があった場合は、すぐに面談して、できることは対応するようにしています。また、目上を敬う文化に鑑み、夏休みなどの長期休暇前には、ある程度立場のある者が同席したうえで、外国人社員を少人数のグループに分け、何回かに分けて注意事項を丁寧に伝えています。
3年程前には、中津川警察署の方にお越しいただき、生活安全や交通安全について外国人向けの講習会を開いて頂きましたが、こうした日本での生活ルールを理解することが大きなトラブルの防止になり、多様な人種が安心して暮らせる地域づくりに不可欠な取組みだと考えています。実習生や特定技能は毎年人の入れ替わりがあるので、現在も、講習会の定期的な開催について警察署に協力をお願いして実施しています。
また、新型コロナ感染症発生前は、会社や地域のイベントがあると、外国人社員にもよく声を掛けており、自由参加ではありますが、運動会や社員旅行、地域のイベントなどへの彼らの参加率は非常に高く、特に、日本の文化に触れることができる夏祭りは、地域の方と一緒になって神輿を担ぎ楽しむことで、親交を深めていました。

中津川警察署の方々との研修の様子

経営者の旗振りが社員と、地域と、外国人を繋ぐ

社長の杉本には、当社の外国人材の受け入れのみならず、この地域に様々な人を受け入れ、地域の発展に繋げたいという想いがあります。
30、40年前までは、中津川市にはブラジル人が多く住んでいました。杉本社長は、姉妹都市レジストロ市(ブラジル)との友好推進協会の会長として、長年にわたる様々な活動を通じ、この地域がブラジル人をはじめとする外国人の受け入れに理解を示してもらえるよう奔走してきました。海外のグループ企業へ出張した際も、必ず現地の幹部や管理職と一緒に食事をし、交流を深めています。そのようなトップの姿勢の影響で、当社には国籍を問わず人材を受け入れる社風が醸成されていると思います。
地域の方も、何かあれば当社にご相談してくださるようになりました。私たちも即、対応しておりますので、そうした繰り返しによって、地域のなかに信頼関係が生まれ、良好な関係性を築くことができてきたと感じています。

中津川市『おいでん祭』に参加した技能実習生、特定技能者の様子

外国人の雇用を考えている企業へのアドバイス

外国人材に関する法律は難しいので、社内に法律に詳しい担当者を配置されたほうが良いでしょう。監理団体に全て任せているから大丈夫と思わずに、自社として理解することで不測の事態が起こった場合でも、迅速な判断や対応ができます。
ただし、外国人材の活用を始めることでのプラス面は多いかと思いますが、決してコストが安いわけではありません。外国人材=安いコストではないことを理解し、まずは制度やルールを自ら習得して、長く継続できる受け入れ体制を整えていかれることをお勧めします。
そして何より重要なことは、外国人材の受入れに、経営者の方が本気で取り組もうとするかどうかです。受入れを会社の人事戦略とし、それが地域の方々の理解促進へと繋がっていけば、必然的に、外国人が安心して住んで働きやすい環境づくりになっていくと思います。

会社概要

会社名

美濃工業株式会社

企業URL

https://www.mino-in.co.jp/

所在地

岐阜県中津川市中津川964-103

事業内容

製造業

従業員数

798名

外国人材雇用人数

タイ 147 名、フィリピン 4  名、中国 6 名、ベトナム 2 名

※取材時点の情報となります。