矢橋ホールディングス株式会社

Interview

矢橋ホールディングス株式会社

業務意欲と能力に国境はない

国内9社、海外7社の16社で木材事業、金属事業、石灰事業などをグローバルに展開している矢橋ホールディングス株式会社。
海外拠点での外国人材の採用にとどまらず、国内事業所でも国籍に関わらず様々な国の留学生を積極的に採用しています。
外国人材採用に対する思いについて代表取締役社長の矢橋 龍宜 様にお話を伺いました。

ベトナムで外国人材の優秀さを認識

「20年程前、鉱山開発の現地法人を立ち上げるために訪れたベトナムで、現地の人材の優秀さを目の当たりにし、外国人材は日本人のように勤勉に働かないのではないかという不安や思い込みが払拭されました。また、帰国後に名古屋大学教授の講演を聴き、教授の紹介で外国人留学生と直接会って話をしました。これらの経験が、外国人材採用のきっかけとなっています。今では、岐阜県や愛知県の大学はもちろん、東北や沖縄など全国各地の大学から人材を採用しています。」と話す矢橋社長。
自らの五感を通して“知る”ことが大切だという信念が、矢橋社長のお言葉から伝わってくる。

代表取締役社長 矢橋 龍宜さん

互いに切磋琢磨する関係

2000年に石灰石の採掘・加工事業の合弁会社をベトナムに設立、2005年にはベトナム政府に当社の品質が認められ、鉱山部門に続き、金属加工部門、CADセンター、木材加工部門を設置しました。
当時、年間130日程ベトナムに滞在しましたが、日本に帰国するたびに、ベトナム工場で実際につくった製品を日本人社員に見せ、ベトナム人材の優秀さを伝えました。日本人社員には、非常に良い刺激になったと感じています。
また、増産対応のため国内工場の人員が足りない時期に、ベトナム工場に応援を頼み、無事に乗り越えることができました。品質確保と納期遵守は重要なタスクで、これは社員間の信頼関係がなければ到底達成できません。ベトナム工場と国内工場とが互いに切磋琢磨し、信頼し合える関係が構築できていたからこそ乗り越えられたという良い事例です。
当社にとってベトナムは外国ではないと、改めて感じることができました。

選ばれる企業になるために

当社は、数ある企業の一つですが、当社で働く外国人材にとっては、当社が唯一の存在です。私たちはそれを十分に自覚した上で、信頼される国、信頼される会社になるという意識が必要です。
かつて、ベトナム工場の従業員が数名離職しました。「当社が、本当に良い企業だと従業員が感じているのであれば、給与等条件の多少の違いで転職することはないはず。当社には、改善の余地がある。」と、その事実を真摯に受け止め、原因調査や、課題抽出の上、改善策を講じました。このような取組みは、貴重な人材の流出防止だけでなく、人材から選ばれる企業になるための重要なファクターであると考えています。
また、矢橋グループの従業員が約1,000名おり、そのうちベトナム人は650名と大半を占めていますが、外国籍の役員は1名しかいません。若い外国人材が当社で経験を積み成長することで、将来、経営幹部となる人材も出るだろうと期待しています。会社を牽引できる外国人材が増えれば、さらに多様な人材の活躍につながると確信しています。
このようにまだまだ課題はありますが、都度改善を図っていきます。その継続が企業ノウハウの蓄積と発展につながると信じています。

海外出身社員との社内打ち合わせ

新たな企画で異文化交流を図る

現在、日本で働いている外国人材は20名です。中国、韓国、ベトナム、インドネシア、ミャンマー、モンゴル、セネガルなど多様な国籍の方が活躍しています。社内報では、外国人材の母国の文化を紹介していますが、加えて、各出身国のソウルフードを食べられる社員食堂を作りたいと考えています。当社は農業への取り組みもあるため、その収穫物を多国籍料理で食べていただくという企画です。ユネスコ無形文化遺産のセネガル料理も候補にあります。
このように食を通じて、互いの文化を知り、尊重しながら、交流が促進できるよう働きかけることも重要だと考えます。

外国人材から教えてもらったこと

ベトナム人社員との交流をとおして、家族を大事にすることを教えてもらいました。ベトナムや中国では、祖父母が子育てを手伝う習慣がありますが、日本で働いている外国人材には、祖父母が身近にいません。仕事は他の社員が代わりに行うことができますが、子どもにとって親は唯一の存在で代わりがありません。当社では、できる限りの子育て支援をしていきたいと考えています。
当社の理念「人間が豊かに、幸せに暮らせるためのモノづくり」のためにも、家族を大事にすることは不可欠です。

お茶事体験

差別や偏見のない社会や企業であるために

世界にはまだ差別や偏見があるのが実情です。
私が幼少の頃、外国籍の同級生がいましたが、悲しいことに彼は差別を受けていました。また、私自身も社長の息子という理由で、一線を画されていました。
その経験から、私は、「会社も、関わる社会も、絶対に差別や偏見のない環境をつくろう。少数派や弱者の味方に立ちたい。」と考えるようになりました。基本的人権が尊重され、守られる社会と企業を作らなければならないと、人として経営者として強く胸に刻んでいるのです。
そして、海外に行けば日本人が「外国人」です。私自身がベトナムに長期間滞在する中で、「外国人」の辛さを実感しました。
日本に来て、私たちと一緒に働いてくれる外国人社員には、私と同じ辛い思いをしてほしくありません。

インターナショナル会議後の懇親会にて

外国人の雇用を考えている企業へのアドバイス

外国人材を雇用する上で大事なことは、その国へ訪問し、文化や人を知ることから始めるとよいと思います。最低でも1週間は滞在し、現地の様々なものを見て、触れて、感じていけば、自身の固定観念から脱却できると思います。そこから理解が始まり、目線が合い、同じ目標で共に助け合い、切磋琢磨できる関係を構築できると思います。
日本人にできることは、外国人にも必ずできます。外国人材が日本人と同じように働ける環境をつくることが企業の役目です。そのために、従業員の皆さんと目線を合わせて一緒に取り組んでいきたいと考えています。
日本人は慣例や暗黙の了解を当たり前だと考える独特の文化があります。海外の方と仕事をする上では、すべてを標準化・ルール化して伝えていくことなども重要です。互いの理解から始まる小さな改善の積み重ねが、外国人から選ばれる会社に発展すると確信し、私自身、今後も取り組んでいきます。

会社概要

会社名

矢橋ホールディングス株式会社

企業URL

https://www.yabashi.co.jp/

所在地

岐阜県大垣市赤坂町226番地

事業内容

製造業

従業員数

1,178 名

外国人材雇用人数

ベトナム 11名、中国 2名、韓国 1名、インドネシア 1名、ミャンマー 2名、セネガル 2名

※取材時点の情報となります。