株式会社飛騨ダイカスト

Interview

株式会社飛騨ダイカスト

官民の様々な取り組みが地域との一体感を創る

高度なアルミニウム鋳造技術で、カーエアコンやワイパーなどの自動車部品を製造する株式会社飛騨ダイカスト。子育て支援をはじめ、多様な人材が働きやすい職場環境整備に積極的に取り組み、2018年からは技能実習生を受け入れています。
その内容について代表取締役社長の渡邉 正憲 様にお話を伺いました。

ベトナム人技能実習生の受入れを開始

当社は、社員のほぼ半数が地元出身の女性です。女性活躍推進に積極的に取り組み、2013年に『岐阜県ワーク・ライフ・バランス推進エクセレント企業』に認定されました。エクセレント企業に認定されたことで、ハローワークを通じての応募が増えましたが、若年層の定着率が低いことが当社の課題でした。
外国人材受入れのきっかけは、飛騨地域で既に技能実習生を受け入れていた企業からのアドバイスです。それで、技能実習生を計画的に受入れて教育し、必要な技能を習得してもらうことで、多様な人材が混じりあい、現場の活性化に繋がると気づきました。日本と同じ仏教国ならば、生活のサポートがしやすいのではないかと考え、受け入れる国はベトナムに決めました。

 

代表取締役社長 渡邉 正憲 さん

社長自らが生活指導員として生活面をサポート

実習生を受け入れるために一番大変だったことは、彼らの生活の場所を確保することでした。地元の方に理解をしていただくための交渉を重ね、住居を借りることが出来ましたが、これに苦労されている企業は多いでしょうね。
住居は、生活費が抑えられ、かつ部屋数を確保できる一軒家を探しました。同じ場所に住むことで、異国での生活に安心感が生まれるのではないかと考えたからです。
生活面は、社長である私が自ら生活指導員になりサポートしています。
社員は夜勤があり、実習生をサポートする時間が取れないため、外国人のサポートを臨機応変にできるのは社長の私です。実際に足を運び、寮で一緒に食事をすることで、彼らの生活環境を理解することもできました。
面白い話ですが、キッチンに炊飯器を1台用意しましたが、しばらく経つとひとり1台の炊飯器を持っていました。ベトナムでは主食を沢山食べていたため、炊飯器を共同で使うと白飯が足りなかったようです。お米を主食にする文化は日本と同じですが、改めて食文化の違いに気づかされました。
また、総務の女性を生活指導の補助員として配置し、私の気が付かないところをサポートしてもらっています。彼女は厳しい面もありますが愛情をもって実習生たちをサポートしてくれているので、彼らにとっては「日本のお母さん」のような存在なっています。

 

寮でたこ焼きパーティー

飛騨市の手厚い支援体制が助けに

飛騨市には外国人技能実習生の居住費、通訳派遣、面接旅費などの補助金や、多言語対応のごみの分別表の無料配布、ごみの分別講習会開催など、受け入れ支援制度が多数あり、非常に助かっています。 
ごみの分別は地域によってルールが違いますが、飛騨市から支給される分別表を見れば自分自身で確認することができるため、間違えが減ります。こうした行政の支援のおかげで、地域との良好な関係が持続できていると思います。
また2022年5月には、2カ月程の期間限定で、飛騨市外国人材コミュニティセンターが開設され、当社の実習生たちも何度か利用させて頂きました。センターのイベントに参加したことで、会社の仲間以外にも友だちができたようです。
飛騨市の外国人材に対する積極的かつ手厚いサポートは、外国人材を活用する企業にとっても、市民にとっても、異国で働く彼らにとっても非常に有難い支援であり、お互いが住みやすい環境の整備に繋がっていると感じています。

飛騨市や組合主催の講習会へ参加・クレドカードなど

技能習得を後押しするスキルマップとクレドカード

当社には、修得した作業内容とレベルを明確にしたスキルマップがあります。このマップの活用によって、今の自分の技術レベルがわかり、次のレベルになるために何をすれば良いかが明確になります。これを実習生にも導入しました。
また、年度ごとの自分の目標を掲げるクレドカードは、実習生も使えるようにベトナム語版を用意し、彼らにも安全や品質、環境について個人目標を立てて貰い、日本人と同じように掲示しています。自身の成長に繋がるスキルマップとクレドカードは、実習生の技能習得の後押しになっており、導入した成果を強く感じています。

実習生の仕事ぶりが日本人社員への刺激に

当社の技能を修得するためには、基礎級ダイカスト技能検定に合格する必要があります。通常、日本人は入社から2年過ぎた頃に受験していますが、実習生は配属から半年後に受けなければいけません。とても大変なことですが、これまでにも、一生懸命に覚えて合格できた実習生はたくさんいます。目的意識を持ち、真面目に学ぶ実習生たちのこうした頑張りは、日本人社員にも良い刺激になっています。

地域の文化に触れ、人と人がつながるコミュニケーション

飛騨市には古くから続いているお祭りがいくつかあります。1期生が来日した時には、お寺巡りがしたいと言っていた彼らを、飛騨で200年続く伝統行事『飛騨古川三寺まいり』に連れて行きました。日本とベトナムではお参りの仕方も違うのですが、そんな違いに触れることも大切だと感じました。また、『古川祭』が行われた際に、すごく感動したことがありました。このお祭りは各家庭の軒先に提灯を吊るす風習があります。その様子を見た実習生たちが「私たちの住まいにも提灯が欲しい」と、見よう見まねで提灯をつくり、私に見せてくれました。このように日本の文化に触れる機会があるほど、お互いの親睦を深められると感じています。

 

古川三寺まいり・古川祭り・手作りの提灯

社員同士の自発的なコミュニケーションで人間関係を構築

言葉の壁を少しでもなくしたいと思い、休憩室にはベトナム語のあいさつなどが載っているパンフレットを設置しました。また現場には、コミュニケーションシートと言ってよく使う日本語をベトナム語に翻訳したシートが掲示してあります。社員は仕事を通して実習生とコミュニケーションをとり、いつしか冗談を言い合えるほどの仲になっていました。新型コロナ感染症が拡大する前までは、職場だけでなく、社員が実習生を誘って魚釣りに出かけたり、大型ショッピングモールへ連れて行ったりもしていました。

外国人の雇用を考えている企業へのアドバイス

日本とは全く異なる環境で育った外国人が活躍するためには、私たち日本人が彼らの生活をしっかりサポートし、安心して働ける環境を整えることが大切だと思います。そうすることで、勤勉でバイタリティがある彼らは想像以上の成果をあげています。
こうした彼らの姿は日本人社員にも良い影響を与え、ひいては会社の繁栄に繋がっています。企業が技能実習生を受け入れるメリットは非常に高いと感じています。その恩恵は、彼らが地域で安心して生活できることで得られるものだと思います。

会社概要

会社名

株式会社飛騨ダイカスト

企業URL

http://hida-daikasuto.jp/

所在地

岐阜県飛騨市古川町宮城町491-1

事業内容

製造業

従業員数

60名

外国人材雇用人数

ベトナム 6名

※取材時点の情報となります。