株式会社恵那金属製作所
Interview
株式会社恵那金属製作所
日本人と外国人が互いに協力する社風
社員の約25%を占める外国人の活躍
当社は、製造、貿易、設計など幅広い業務を行っているため、雇用の門戸を広げ、国籍にかかわらず幅広く採用してきた結果、現在は従業員数126名の約25%にあたる32名が外国人という状況にあります。国籍は中国、韓国、ネパール、インドネシアと様々で、在留資格も「技術・人文知識・国際業務」、「特定技能」、「技能実習」など多様です。このように多種多様な外国人社員が働く職場は、一般的に人事管理が難しく、作業効率も落ちるのではと思われがちですが、当社では、それぞれの外国人社員が各分野で力を発揮してくれており、非常に効率良く仕事がまわっています。それを可能としているのは、異文化、異言語に対する日本人社員の理解が土台にあったからだと考えています。当社ではかねてよりグァム、サイパン、プーケット、シンガポール、韓国などの海外へ社員旅行に行っており、現地の方との交流を積み重ねてきました。そこから外国人社員を受け入れる社風が自然と育ってきたのだと思います。
代表取締役 市岡 真二さん
外国人社員とのコミュニケーションと教育
初めて雇用した外国人は、中国からの技能実習生でした。そこで課題となったのが、異言語によるコミュニケーションをいかに円滑に行い、関係性を深めるにはどうしたらよいかということでした。そこで、まずはスマホアプリの翻訳ツールの導入や、現場の作業マニュアルを現地語に翻訳することから始めました。これには当然コスト、工数が発生しましたが、想定以上の効果があったと考えています。
次に、中長期的な視点で外国人社員を育てるため、業務面、生活面の効果的な指導方法についても検討しました。そして、日本人社員による教育に加え、技能実習生の先輩が後輩に指導することも効果的だと考え、まずは、1期生が2期生以降を指導する教育体制をつくりました。この体制は、今も効果を発揮しています。
さらに、英語を話せる日本人社員が、生活指導員として外国人社員をサポートする体制も整えました。基本的に社内の共通言語は日本語としていますが、フィリピンやインドネシアなど母国語が異なる複数の外国人社員が混在していることから、英語でのコミュニケーションも可能とする体制としたのです。その結果、生活面などでは、むしろ英語の方がコミュニケーションを図りやすい状況になったほか、言語の選択肢が増えたことで、外国人社員の安心にもつながったようです。
フィリピン現地面接後の様子
年齢・性別・国籍を問わず評価
当社には、年齢・性別・国籍を問わず、能力ベースで評価し、それを互いに認め合う風土があります。その一例として、表彰制度が充実しています。「社員が投票で選ぶMVP」と「社長が選ぶMVP」があり、どちらにも技能実習生が選出されたことがあります。また、外国人社員は、昇給はもちろん、係長や主任にも昇進しています。
ほかにも、中国にある子会社の総経理(社長)は、かつて当社でアルバイトをしていた中国人留学生の方にやってもらっています。彼には、入社後しばらく国内事業で経験を積んでもらい、中国工場に赴任してもらいましたが、その後管理職、工場長を経て、現在は総経理(社長)です。私自身も、23歳で入社してから様々な役職を経験したのちに社長に就いておりますが、“努力し、成果を出せば認められる環境”が当社に整っていることが、個人を成長させ、そして会社の成長にも繋がっていると感じています。
(左)MVP表彰された技能実習生/(右)優良実習生として表彰
まずは相手を知ることからはじめる
中国工場の立ち上げの際、私は累計130回ほど中国に行きましたが、工場でも街中でも「日本人が私ひとりだけ」という状態が何度かありました。現地では私自身が外国人として扱われ、マイノリティの寂しさ、不安などを経験しました。しかし、その経験のなかから学ぶことも多くあったと感じています。そこで当社では、外国人社員を暖かく受け入れるための考え方を醸成するために、幹部社員を中国工場に出張させることによって、あえてマイノリティの立場を経験させています。外国人を受け入れる際は、まずは、相手のことを、身をもって知ることが大切だと考えています。 ほかにも、コロナ禍で暫く実施できていませんが、技能実習生の面接を現地で行い、さらには家庭を訪問して生活環境を見ることで、面接だけでは伝わらない事情や背景を知るように心がけています。特に、ご家族と面会すると、本人の人間性や想いまでも分かります。例えば、小さなお子さんをご主人に預け、日本で働くことを決意された女性がいました。まだ若い母親です。そんな彼女が小さなお子さんから離れ、ひとり海外で働くのは、さぞかし辛いことです。それでも、家族のため、子どものために頑張ろうと決意されました。その姿を見たとき、我々は何を感じるかということです。その感じたことをずっと大切にしなければなりません。そして、それを社員にもしっかりと伝えることが大切です。
日本人社員の中には、技能実習生たちの置かれた生活環境が自分たちと同じだと考えている人もいますが、決してそうではないということを理解することも必要です。社員たちに急な変化を求めているわけではありません。少しずつでいいので、正しい理解で価値観が少しずつ変わることを期待しています。
フィリピンでの面接後、家庭訪問
外国人の雇用を考えている企業へのアドバイス
外国人を外国人として扱わないことが最も大切だと思います。国籍、年齢、性別は関係ありません。能力があれば外国人にも若い人にも役職ポストを与えます。
少子高齢化が進む中、日本の中小企業、特に製造業では外国人材の活用を避けて通れません。それならば、同じ人間として対等に活躍できる場を作った方が生産的です。
外国人だからと偏見を持っている方もいらっしゃいます。また、外国人に対する悪い評判が一部にはあることも事実です。
国籍などの大きなくくりで捉えずに、個々と向き合えば偏見など持つ必要はないとわかるはずです。
当社の企業理念のひとつに、『社員への貢献』があります。これを社内においては『なかまへの貢献』と読み、社員同士で貢献し合う風土を醸成しています。これにより日本人も外国人も関係なく、お互いに貢献しあえる組織になっていると思うのです。
日本人だから、外国人だからではなく、同じ人間として向き合うことが外国人材を活用する上でとても大切なことだと考えます。
会社概要
会社名 | 株式会社恵那金属製作所 |
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企業URL | |
所在地 | 岐阜県中津川市小川町2 番18 号 |
事業内容 | 製造業 |
従業員数 | 126 名 |
外国人材雇用人数 | 中国 4 名、ネパール 1 名、インドネシア 6 名、韓国 1名、フィリピン20名 |
※取材時点の情報となります。 |
2021年に創立75周年を迎えた株式会社恵那金属製作所。
高い技術力が求められる難削材と呼ばれる金属の量産加工や意匠性が求められる商品の表面処理加工を強みとし、自動車業界からペット用品業界、家電業界まで幅広くその技術が採用されています。中国江蘇省に子会社を持つなどグローバルな事業展開の中、多くの外国人が活躍されています。そこで、外国人材活用のきっかけや秘訣を代表取締役の市岡 真二様に伺いました。