安藤鉄工株式会社
Interview
安藤鉄工株式会社
多様な在留資格の外国人材との共存と成長
技能実習生の受入れから多様な在留資格の採用へと発展
技能実習生の受入れは、取引先企業が技能実習生を活用していることを知ったことから始まりました。元々、外国人材の管理工数負担の懸念もあり、一歩踏み出すことができませんでしたが、その取引先に相談できるという安心感もあり、受入れを決断しました。
その後、外国人材の受入れに慣れてきたこともあり、多様な在留資格の外国人材を採用しています。現在は、技能実習生17名、特定技能44名、技術・人文知識・国際業務のエンジニア18名と通訳9名が在籍しています。
多様な在留資格の採用
まず技能実習生ですが、受入れ当初は、社長の陣頭指揮のもと、社長自ら、監理団体とともにベトナムへ向かい、現地で面接を行い、実習生を採用していました。この当時は、面接から入国手続き、社内の受入れ準備を整えるまでに、概ね半年間を費やしていました。外国語を併記した作業手順書も新たに作成しましたが、これは、技能実習生だけでなく、結果的に、日本人社員の不安の払拭や負担軽減にも役立ちました。
次に特定技能ですが、当社では2通りの採用方法を取り入れています。ひとつは、当社での技能実習を修了した者の中から、継続して就労を希望する者を特定技能に切り替える方法です。もうひとつは、他社の技能実習修了者を対象とする人材募集を行い、面接をして、当社の特定技能として採用する方法です。一般的に、日本での生活や仕事に慣れている技能実習修了者は、継続して日本で働き続けることを希望することが多いのですが、中には、企業側が継続雇用の門戸を開かない場合があります。当社では、このような貴重な人材を、登録支援機関やハローワークを通じて募集し、積極的に採用しています。
また、エンジニアについては、海外のネットワークを活用し、現地の送出し機関などを通じて募集しています。こちらも、技能実習生と同様に、現地で面接し採用しています。一方、通訳は、ハローワークを通じて日本国内で募集することが多いです。
総務部 部長 金子 慎一 さん | 総務部 主任 加藤 貴文 さん |
多文化・多言語が共存するための社内体制
当初は、技能実習生の受入れ手続きから生活のサポートまで、私(金子様)ひとりが従来の業務と掛け持ちで担当していましたが、外国人材の採用を加速させた2019年からは加藤が入社し対応してくれました。加藤は元々、当社と取引のある外国人材紹介会社に在籍し、特定技能やエンジニアを多く紹介してくれていましたが、当社の旧本社があった赤坂町の出身という縁もあり、当社への転職を決意してくれました。彼は、外国人材の採用に関する法令や制度・仕組みだけでなく、当社に在籍する外国人材を熟知しているため、安心して任せています。
また、当社には7つの課がありますが、語学を学んだ留学生を2021年4月から採用し、全ての課に1名ずつ通訳として配属したところです。彼らは、通訳業務の一環として、外国人社員の語学教育のほか、現場の指導体制をフォローするための作業手順書、要領書を母国語で作成するなど、様々な業務に対応してくれています。その結果、現場で何か問題が生じても、それぞれの課で解決できるようになり、業務効率を向上させることができました。そこで来年は、夜勤の時間帯にも通訳の対応ができるよう、各課通訳2名の体制にしたいと考えています。
当社のように、外国人材が27%を占める多文化、多言語の組織においては、日本人と外国人が共存できる体制を整備していくことが大変重要だと考えています。
多言語での注意喚起
日本に残っていただくためのバックアップ
外国人社員の中には、どうしても日本の習慣や環境に慣れることができず、退職を申し出る方がいますが、当社ではそのことを真摯に受け止め、なるべくそうした状況が発生しないよう、対策を講じています。例えば、面接の時からできるだけ細かく職場の現状を伝え、本人の事情や意向も聴き取ることで、働き始めてから問題が出ないように配慮しています。また、説明の際には、記憶に頼った曖昧な理解にならないよう、口頭だけではなく文書でも示すなど、様々な工夫をしています。それでも退職を申し出る外国人社員がいた場合は、その理由を丁寧に聴き取り、社として対応できる点があれば改善に取り組んでいます。それにより退職を思いとどまってくださる場合もありますが、中には残念ながら退職して帰国という結果になることもあります。
また、技能実習生の場合でも、もし「日本に残りたい」という希望があれば、当社では特定技能として積極的に継続雇用をしています。
残って働きたいと言ってくださる方には、とにかく感謝の言葉しかありません。これからも多くの外国人の方に、日本に残って働きたいと思ってもらえるよう、社としてできるかぎりの努力をしたいと考えています。
特定技能ベトナム人のヴァンさん
社内コミュニケーションの課題への取り組み
残念ながら現在は実施できていませんが、新型コロナウイルス感染症が拡大する前は、歓迎会や食事会など、外国人社員と日本人社員のコミュニケーションの場を積極的につくることで、互いに習慣や文化の違いを理解するよい機会になっていました。一方で、会話でのコミュニケーションにはまだまだ課題があると感じています。というのは、たとえ日本語検定N3レベルの語学知識があっても、会話だけは苦手とする外国人社員が多いのが現実だからです。
そこで、彼らが少しでも実践的な日本語での会話を練習できるよう、日本人社員と外国社員が一緒になって、休日に勉強会を行うことにしたところ、皆、積極的に参加してくれました。当社の技能実習生は、素直で真面目な方が多く、一生懸命に学ぶ彼らの姿を見た日本人社員たちにも、彼らに寄り添う意識が芽生え、徐々に互いの心の距離感が縮まっていくのが目に見えて分かりました。今後も、さらにコミュニケーションを活性化させるための体制や方法を検討していきたいと考えています。
勉強会の様子
外国人材の活用を考えている企業へアドバイス
当社では、日本人も外国人も給与額は同等ですが、毎月の監理委託費など含めた総費用を考慮すると、外国人雇用に要する人件費コストの負担は、日本人よりは多少大きくなるかもしれません。しかし、外国人雇用によって当社が得るメリットも非常に大きいと感じています。技能実習生の場合、彼らは企業から技能を習得できますし、企業側も様々なメリットを得ることができますので、ある程度のコストがかかったとしても、それはお互いの成長のために必要な、十分に価値のあるものだと捉えることができると思います。
また、外国人雇用に関する制度や正しい知識を日本人社員に理解してもらう取り組みは大変重要だと思っています。例えば日本人と外国人で業務効率に差があるような場合に、日本人社員から不満が出ることがありますが、正しい知識があれば、誤解やすれ違いを避けることができます。
最後に、当社のように、日本人と外国人が共存する組織にとっては、社内の管理体制の構築が成長のカギだと考えています。状況に応じて常に体制を見直し、継続的に改善に取り組むことで、双方とも働きやすい職場環境へと成長していきます。そうした改善の蓄積こそ、社としての人材活用のノウハウになると考えています。
会社概要
会社名 | 安達鉄工株式会社 |
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企業URL | |
所在地 | 岐阜県揖斐郡池田町粕ヶ原278番地 |
事業内容 | 製造業 |
従業員数 | 330名 |
外国人材雇用人数 | ベトナム 86 名、中国 3 名 |
※取材時点の情報となります。 |
産業用ロボットと建設機械の部品加工技術で世界のモノづくりを支えている安藤鉄工株式会社は、2017年から外国人技能実習制度を活用しています。2022年8月現在、総従業員(顧問・パート・派遣を除く)の約27%(92名)を外国人材が占め、その在留資格も多様です。今回は、総務部 部長の金子 慎一様と主任の加藤 貴文様にお話を伺いました。