株式会社東和製作所
Interview
株式会社東和製作所
企業の将来ビジョンと社員のキャリアプランの一致が、高度外国人材を呼び込む
三か国語を駆使する通訳者が外国人社員との意思疎通を円滑に
当社では社員の3割が外国人で、製造現場を中心に多くのブラジルやフィリピンの方が働かれています。
日本人社員が外国人社員に製品の品質改善に関する指示、要望を伝え、「わかりましたか?」と確認すると、大体「はい」と答えるものの、現実には期待通りに動いてくれないという状況が多発していました。私は、これは、たとえ同じ会話であっても、彼ら外国人社員の認識と私たち日本人社員の認識には微妙なズレが生じていることが原因なのではないかと考えました。そこで、指示や要望の内容を外国人社員に的確に伝えることができるように、多言語を扱える通訳者を探すことにしました。
そして、英語、ポルトガル語、日本語の三か国語を駆使できるヤマナカさんを採用することができました。彼は、日常業務での通訳だけでなく、上司とその部下との個人面談の場などでも言語の壁を超えた意思疎通に努め、また、作業手順書などの英語、ポルトガル語への翻訳も行うなど多方面で活躍してくれており、当社になくてはならない社員のひとりです。
生産性向上推進室 室長 板津裕斗 さん
IT、デザイン分野の高度外国人材を積極的に採用
国籍や経験にとらわれず誰もが積極的にチャレンジできる、公平でグローバル感覚にあふれる会社経営を目指している当社では、IT技術者、デザインの分野で活躍できる高度外国人材を広く求めていました。かつては人材紹介会社を利用して募集していましたが、なかなか採用することができませんでした。そこで、私自身の海外留学時の人脈を活かし、交流のある外国人の友人やSNSコミュニティを利用した『友人枠』と称する草の根の採用活動を行ってみたところ、IT技術者、デザイナーの外国人材を無事採用することができました。
外国人プログラマーが会社のITの課題を解決
2019年に、アメリカ出身のジョンさんがIT技術者として入社してくれました。
彼は、私が高校生の時に母校に配属されていたALT(外国語指導助手)で、卒業後も交流は続いていました。彼はその後、生産管理のプログラマーとして活躍されており、プログラミングに関する造詣が深いことから、当社のITに関する課題について相談していました。彼がいれば、当社が抱えるITの課題解決ができると考え、私から声がけして入社してもらいました。彼が転職を決めた理由は、もちろん、当社の将来ビジョンや彼にやってほしい仕事が彼のスキルアップにつながり、チャレンジし甲斐がある仕事だと感じてもらえたことが挙げられますが、「困っている友人を手伝う」という友人ならではの感覚もあったのではないかと思います。現在彼は課長職として、生産管理の改善プログラムなどを構築するチームを率いています。
ITエンジニア達の仕事風景
外国人Webデザイナーが社内のデジタル利用環境の向上に寄与
2022年には、イタリア出身のジョバンニさんがWebデザイナーとして入社してくれました。
彼の場合は、InstagramでWebデザイナーを探していることを発信したところ、もともと友人であった彼が仕事内容に興味を示してくれました。彼にはWebデザインの経験はありませんでしたが、ポスターなどに描くグラフィックデザインのスキルを持っていました。そこで会社としては、まずは現在のスキルに見合う給与額を彼に提示したのちに、今後はどんなスキルを身に付けてもらいたいかというキャリアプランも併せて提示しました。彼は、こうした、将来への積極的なチャレンジを歓迎する当社の企業風土に関心をもち、自身のキャリアのワンランクアップも目指して、Webデザイナーの卵として当社への入社を決めてくれました。
早速、彼は社内プログラムのユーザーインターフェイスのデザインを変更してくれましたが、社員からは「見やすくて、非常にわかりやすい」と好評です。
会社の方向性を示すハンドブック
外国人社員も含め、会社の将来ビジョンを社員全員に共有することは非常に重要です。当社では、新型コロナウイルス感染症が拡大する前は、全社員が参加する集会を開いていましたが、現在は、社長のメッセージや経営計画を掲載したハンドブックを作成し、全社員に配布することで社内のガバナンス強化を図っています。そのハンドブックには「今後、外国人材を積極的に採用し、同等に評価していく。」と記載してあります。そして、多様な国籍がいる外国人社員にも会社の将来ビジョンが理解できるように、英語、ポルトガル語、ブラジル語、ベトナム語に翻訳しています。こうした取り組みを通じて、今後は外国人のリーダーも増えてくると期待しています。
社員に配布されるハンドブック
海外経験から学んだ、個性を大切にするグローバル感覚
外国人社員に指示や要望を伝えるときは、「日本にいるなら、日本のルールに従いなさい。」と押し付けるように説明すると、反対に従ってくれないことが多いです。その時は、「君の母国の文化も知っており、それとは違うかもしれないが、日本ではこうなっているので、こうした方がいいよ。」と、相手にできるだけ寄り添い、ひとり一人の立場に立って言葉を伝える努力をすると良いと思います。実は私も25歳の時にアメリカへ単身で留学し、自分自身がマイノリティ(少数派)の立場を経験しました。そこでは、日本人だからと国籍でひとくくりに捉えられることも多かったのですが、様々な国の人と関わるなかで、そうした捉え方は誤りであることに気づかされました。人には個性があり、ひとり一人違います。決して国籍でくくることはできません。私はこの経験によりグローバル感覚を養い、異文化、異言語などを受け入れる姿勢が身につきました。これからも、グローバル感覚を衰えさせないよう外国人の集まるコミュニティに積極的に参加し、様々な国の方たちとコミュニケーションをとりながら、互いに信頼できるネットワークを築いていきたいと思っています。
職場仲間との食事会にて
外国人材の活用を考えている企業へアドバイス
当社が前述の3人の高度外国人材を採用できたのは、会社の将来ビジョンや、それを達成するために必要な業務、そしてひとり一人のキャリアプランに配慮した説明を丁寧に行い、それが、ワンランクアップを目指す彼らのキャリアプランと一致して興味につながり、成長意欲に訴えることができたからだと考えています。このように、お互いの理解とWin-Winとなる関係性を築くことが重要です。さらに、多くの外国人の場合、業務上の説明や指示は曖昧な表現ではなく、理解しやすい言語を使用して、より具体的に伝えると良いと思います。それにより、習得度や理解度が大きく高まるはずです。
会社概要
会社名 | 株式会社東和製作所 |
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企業URL | |
所在地 | 岐阜県美濃加茂市川合町4-5-2 |
事業内容 | 製造業 |
従業員数 | 282名 |
外国人材雇用人数 | アメリカ1名、イタリア1名、ミャンマー1名、フィリピン14名、ベトナム名22名、ブラジル55名 |
※取材時点の情報となります。 |
油圧シリンダの多品種少量生産を得意とし、その開発設計から製造販売・修理再生までを一貫して手掛ける株式会社東和製作所。様々な国籍の外国人材が、社内のデジタル化による業務効率化の最前線などで活躍しています。
高度外国人材を積極採用されている生産性向上推進室 室長 板津裕斗様に、その理由を伺いました。