株式会社田口鉄工所

Interview

株式会社田口鉄工所

働いてくれる人材は会社の宝です

近年、モノづくりの現場ではロボットの導入が急速に進行しています。産業用ロボットの関節部分の部品を、ミクロン単位の精度で加工する高い技術力が強みの株式会社田口鉄工所。製造現場の自働化やロボット導入に加え、女性や高齢者など多様な人材が活躍しています。数十年前より外国人材も活用しており、その取り組みについて、取締役の田口 薫様にお話を伺いました。

外国人技能実習制度 導入のきっかけ

当社は年齢、性別、国籍に関係なく、社員が長く仕事を続けられる環境づくりを大切にしています。外国人材については、当初派遣社員が在籍していましたが、外国人技能実習制度を知る機会があり、当社もその制度を活用することにし、現在に至ります。

現場教育の考え方

外国人技能実習制度は、開発途上国等の外国人を日本で一定期間(最長5年間)に限り受け入れ、OJTを通じて技能を移転する制度です。当初、現場は、期限を迎えると技術を身に着けた人材が帰国してしまう本制度の活用に消極的でした。 
私は、逆の発想で、計画的に教育し、必要な技能を習得してもらえれば、少なくとも3年程度は現場で活躍してくれる仲間が増えると考えました。
現在、外国人の先輩が後輩に基本的な業務を教え、日本人が技術的な指導をする教育体制を試行錯誤しながら整備しています。日本人が外国人へ技術を教えることは、言葉の壁もあり時間がかかりますが、「教える側にも成功体験となり、また教えようという気になる」と工場長も前向きな捉え方をしています。
こうした経験が少しずつ増えることで、良好に働く環境になっていくと感じています。

取締役 田口 薫さん

技能検定にむけた筆記試験サポート

日本語検定取得に向けた支援としてN3の教材を購入して渡していますが、意欲の高い人は教材がボロボロになるまで勉強しています。
また、技能検定は仕事に直結しているため、全員合格を目標に支援しています。検定試験が近づくと休日を活用して勉強会を行い、工場長や現場のリーダーが講師となり試験に向けたサポートをしています。

日本語教室を開催

昨年(2021年)、県の [外国人就労者向け日本語教室] を活用しました。
土曜日の半日を活用した8回の開催で、当社が会場を提供しました。当社から8名、他24名の計12名の外国人の皆さんが受講し、国籍は様々でした。講師は4名で、すべて日本語で日本の文化と日常生活に役立つ言葉を教える形式です。例えば、日本では夏の過ごしやすい日には「涼しい」という言葉を使いますが、四季のない環境で育った彼らには、「暑い」「寒い」という言葉しかイメージできず、理解に時間がかかることもあります。他にも、病院の行き方や防災、都道府県名など生活での実用的な内容も含まれ、その結果、普段の生活の困りごとを解消したり、また職場のコミュニケーションにも役立ったなどの感想が聞けました。

外国人就労者向け日本語教室(2021年)

生活面の教育は1年目が大事

日本での生活指導は、1年目の教え方・伝え方が大切だと感じています。母国とは全く環境の異なる国で、慣れない生活にチャレンジしていることを理解した上で、予想できないことが起こってもやむを得ないと、寛容に受け止めています。
私は最初からルールを押し付けることはしません。来日したばかりの時に、無断で休んだ方がいました。その際、「事情によっては休むこともありますが、その場合は、必ず連絡を入れて下さい。連絡が無いと全員があなたのことを心配します。」と、連絡することの重要性を理解してもらうことから始めます。
また、日本語で彼らに伝える工夫として、生活面を指導する「生活指導員講習」で習った話し方のポイントを活用しています。
ゆっくり話すことや、日本人特有の表現、言い回しを使うと誤解が生じることもあるなどのノウハウを管理職全員と共有し、現場教育でも意識して伝えています。

「生活指導員」の川井なつみさんから話し方のポイント等ノウハウを共有

外国人材を受け入れて良かったこと

言語や文化が異なる外国人材を受け入れたことで、表現の仕方によっては真意や想いが十分に伝わらないことを思い知らされました。現場の職員たちは、いつも彼らに「技術を教えよう、伝えよう」と一生懸命です。人に何かを教えるには、思いやりと優しさが大切です。この心持ちは、未経験の日本人が入社した際にも活かされます。外国人が理解できるように伝えられるようになることで、日本人にも分かりやすい教え方ができるようになり、おかげで、現場の職員たちの人を育てる力が大きく向上しました。

社員は家族、多様な人材が働き続けられる企業へ

当社は、祖父が起業し、祖母が従業員のサポート全般を行っていた会社です。創業当時から「社員は家族、働いてくれる人材は会社の宝」という想いがあり、私は幼い頃からその様子を見て育ちました。
当社には新卒、女性、シニア、外国人など多様な人材が働いています。会社として大切なことは、その特性に合わせた働き方を、従業員と相談しながら柔軟に対応し続けることだと考えています。今では45名程の従業員のうち、女性が4割を占め、勤続40数年の70代のシニア女性も働いています。彼女たちは積極的に外国人の面倒を見てくれ、「日本のお祖母ちゃん」のような存在になり、彼らとの信頼関係が生まれています。「お互い様」の精神をもって助けあう社風を継承し、外国人に限らず女性も、シニアも、若者にも、働き続けられる企業風土を今後も作っていきたいと常々思っています。

タンさんと田口さん

企業へのアドバイス

親密な人間関係ができれば、小さい会社ほどその効果を発揮します。親密な関係とは特別なことではなく、経営者や従業員の方から彼らに話しかけたり、一緒に食事をするなど、何げない気配りから作ることができます。日本人と同様に、コミュニケーションが深まれば、彼らから家族のことや自分のことを話すようになるなど、信頼関係が生まれます。
異国の地に来て頑張ってくれる人材は「自社の宝」だと思って接していけば、外国人材の活用が成功するのではないでしょうか。

会社概要

会社名

株式会社田口鉄工所

企業URL

https://taguchi-mw.com/about.html

所在地

岐阜県大垣市中曽根町319-1

事業内容

製造業

従業員数

49名

外国人材雇用人数

ベトナム 5 名、ポルトガル 2 名

※取材時点の情報となります。