岐阜プラスチック工業株式会社
Interview
岐阜プラスチック工業株式会社
海外へ出向き、独自の実務検査と面接方法で採用を決定
外国人技能実習生との共生と効果
当社では、2000年頃から技能実習生を受け入れています。技能実習制度は、働きながら技術を覚えていただき、教育訓練を重ねて仕事に従事していただくものです。向上心のある外国人材は技術の習得もはやく、現場に良い影響を与え、職場が活性していると感じています。
総務統括本部 総務部 部長 栗本 幹実 さん
品質に対する考え方の違いを理解してもらい、作業手順は見える化を実施
日本製品の品質は、世界に誇れる基準です。言葉の壁もあり、品質に対する考え方を技能実習生に理解していただくことが一番苦労しました。当社では、現場担当者と工場の総務、監理団体の通訳が一緒になって、彼らに懇切丁寧に都度説明しています。
また、ライン作業の多くは目で見て覚えることができる作業であるため、当社では、機械の前にモニターを設置し、標準的な作業内容やポイントの映像を、常に映し出すようにしています。こうした映像を用意することで、どこの国の方でもスムーズに作業に取り組むことができます。こうした取り組みは、もともとは技能実習生の為に始めたものですが、日本人の新入社員や、急遽ラインに入ることになった社員からも「標準作業がいつでも見られる」と喜ばれるようになりました。
機械前モニター
採用は必ず現地に訪問し、自社の作業基準でチェック
技能実習生は、監理団体を通じて採用することになりますが、当社では、それまでにいくつかの段階を踏むこととしています。
まず、事前にCUBIC適性検査を実施し、対象者の特性を社内で検討します。この検査では集団生活がうまくいかない可能性のある人や、ホームシックにかかりそうな人の傾向が分かります。
その上で、実際に海外の送出機関を訪問し、実技検査と面接を行って候補者を決定します。もし6名採用する場合なら、実際にお会いするのはその3倍の18名程になります。
海外における実技検査では、穴の開いたステンレス板に50本のボルトを入れる作業を、一切練習なしで行って貰います。当社では、この作業で過去に何千人もの方を検査し、その標準作業時間のデータを有していますが、これまでの実績から、基準の秒数以内の方を採用すれば、仕事がスムーズにできるということが実証されています。
また、海外における面接では、候補者の自己紹介から言葉の聞き取りやすさを確認しています。彼らにとって日本語は、母国語の音域と違うため非常に難しいです。発音が明瞭な人は、日本語の習得も早い可能性があり、評価しています。
こうした、実技検査、面接のいずれの基準も満たした2人から、どちらか1人を選ばなければならない時もあります。その場合は、もう一度ボルトを用いた実技検査を行い、より早く行えた人を採用することにしています。私が候補者選びの際に判断の基準にしているのは、何よりも作業スピードです。また、実際に現地に赴き、対象者の作業や生の言葉を聞くことは、とても大切だと思います。
会社の代表として現地で判断をするので非常にプレッシャーですが、私なりに工夫を重ねた結果、社内でも評価をいただいております。
現地での採用活動の様子
交換日記とSNS
採用後の課題は、技能実習生たちに日本の生活に少しでも早く慣れていただけるよう、会社としてどのような支援ができるかということです。もし立場が変わり、私たちが、言葉が通じない海外で働く場合を想像すれば、きっと毎日が不安でしょうし、会社から支援を受けられれば、大変心強いことと思います。
そこで当社では、日本語の学習支援を積極的に行っています。日本語検定N2~N4の取得を目指している技能実習生がいれば、全員に教材を提供しています。
また毎日、日本語で日記を書いてもらい、1週間に1度業務管理部へ提出してもらったものを添削し、コメントを付けて返却しています。この取組みによって、彼らが日本語を学ぶ機会をつくると同時に、お互い心を通わせ、悩みや困りごとなどを把握することもできます。
先日は、この日記に、「給料計算がわからない」、「電気が切れた」、「物が壊れた」などの悩みが書かれていたので、すぐに問題を把握して対応することができました。こうした取り組みは、本社だけではなく、全ての事業所で行っています。
他にも、SNSのグループトークや個別トークでもコミュニケーションを図っており、新型コロナ感染症に関する注意喚起及びルールの徹底や、パスポートの更新に関する通知など、様々な情報を提供し、日本での生活をサポートしています。
交換日記
外国人材の雇用を考えている企業へアドバイス
一番大切なことは、監理団体任せにしないことだと思います。私は海外の送出機関と直に連携をとっています。その方が現地の情報が入りやすく、海外の情勢に詳しくなれるからです。
また、監理団体の毎月の監理費用と内容をよく調べると良いと思います。だいたい月3万円前後が相場ではないでしょうか。
それより高すぎる場合や低すぎる場合は契約内容を確認するとよいと思います。例えば、通訳が何人いるか、監理団体の社員なのか、外部人材なのかを把握することも重要です。通訳の人数が少ないと必要な時の対応力に不安があります。基本的に監理団体は契約書に書いてあること以外は対応してくれませんが、新型コロナ感染症のようにイレギュラーな事態が起きた場合はどうするのか、最初に話し合っておくことも大切だと思います。外国人技能実習制度は私たち受入れ企業が積極的に関わることで、品質管理が保たれ、人材の定着・安定性に繋がると思います。
会社概要
会社名 | 岐阜プラスチック工業株式会社 |
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企業URL | |
所在地 | 岐阜県岐阜市神田町9丁目27番地(大岐阜ビル) |
事業内容 | 製造業 |
従業員数 | 2,245名 |
外国人材雇用人数 | 中国 28名、ベトナム 28名 |
※取材時点の情報となります。 |
プラスチック総合メーカーとして幅広い分野でパイオニア的役割を担う岐阜プラスチック工業株式会社。環境配慮型企業として、いち早く環境に対応した製品を作り続けています。生産拠点は国内7カ所にあり、うち5カ所で外国人材を受け入れています。
その内容について、総務部長の栗本幹実様にお話を伺いました。